バーチャルリアリティが精神科の治療になりそうです
バーチャルリアリティ、略してVRが徐々に普及してきていますね。
VRのゲーム機が発売されて話題になったりもしました。
このVRですが、遊ぶ、楽しむという目的だけで使われるわけではありません。
現実の空間を再現できるので、シミュレーションとして使うこともできますし、トレーニングとして使うこともできます。
そして、メンタルの治療にも役立つことが分かってきています。
そもそも、人間は周りの空間、環境に心を揺さぶられる生き物です。
なので、周りの空間、環境を作り変えることができるVRは、人間の心に関わりやすいと言えます。
今回は、このVRがメンタルの治療にどこまで役立つのかを明らかにするため、今までの研究をまとめた論文を紹介します。
論文をまとめるというのは、系統的レビューという手法で、多くの研究結果を集めて解析したものですね。
Virtual reality in the assessment, understanding, and treatment of mental health disorders. Psychol Med. 2017. (論文タイトル、雑誌名、発表年)
ここでは、VRと精神疾患に関する285の研究論文が調べられました。
具体的な精神疾患としては、
不安障害(パニック障害や、社交不安障害など、不安が主に出る様々な精神疾患の総称です)について調べた研究が192、
統合失調症(幻覚や妄想などが続く病気で、被害妄想が出たり、そのために他人が怖くなったりします)について調べたものが44、
依存症(物質使用障害とも言いますが、アルコール依存症や覚せい剤依存症などのことです)が22、
摂食障害(過剰なダイエットをしたり、食べたものをすぐに吐いてしまったりするものです)が18でした。
一目瞭然ですが、不安障害が一番調べられていますね。
不安障害の治療の一つとして暴露療法というものがあります。
不安や恐怖の対象に少しずつ慣れていくという治療です。
例えば、他人が怖い人は、初めは1人だけ他人がいる場所でも気持ちを落ち着けていられるようにし、次に、数人の人がいる場所、さらに次は、もっと人が多い場所でも大丈夫にしていくというように、段階的に苦手を克服していくような治療です。
こうした、苦手なものがある場面や場所をVRを使って再現するという方法が、不安障害の治療に有効なようです。
しかし、将来的にはさらにVRの用途が増えるかもしれません。
まだまだ、大規模な研究が無いので今の段階で言えるのは、不安障害の暴露療法にVRが使えるということだけのようですが、そのうち他の病気の治療でも使えるようになるかもしれません。
今後の発展に期待したいですね。
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