うつ病を放置すると脳に炎症が起きるかも
このページについて:うつ病の未治療期間が長いと、脳に炎症が起きる可能性を指摘する研究報告を紹介します。
うつ病は休むだけで自然に治る人もいないわけではありませんが、基本的には精神科で治療した方が早く良くなります。治療しないでいると、なかには重症化してしまう場合もあります。うつ病は自殺にもつながる病気ですから、重症化させては危険です。こうしたことから、うつ病は早期治療が大事だと考えられています。
しかし、うつ病の早期治療が大事だということは、他にも理由があるようです。今回は、うつ病を治療しないでいると脳に炎症が起こるという研究結果をご紹介します。これはカナダで行われた研究です。
うつ病と脳の炎症に関連性があることは、これまでの研究で明らかになってきました。しかし、脳の炎症があるかどうかを確認する方法が難しく、今までは腰に長い針を刺す髄液検査というものをしないといけなかったりと、大変だったんですね。しかし、最近は新しい技術であるTSPO-PETという検査により、かなり安全に評価できるようになってきました。TSPO-PETは、まだ普通の病院にはありませんが、一部の研究機関などに配備されています。これは、脳の免疫細胞であるマイクログリア(ミクログリア)というものが活性化しているかどうかを調べる画像検査です。マイクログリアが活性化するとTSPOというタンパク質が増えるので、そのTSPOを可視化すればマイクログリアの活性化が評価できるという理屈です。TSPO-PETは、そのTSPOを特殊な薬品を使って標識をつけてからスキャンすることで、見えるようにする画像検査なのです。
この研究では、18歳から75歳の人たちを募集し、うつ病があるかどうか、または健康的な精神状態かどうかが面接で評価されました。大抵の研究は、比較する対照群として健康な人のグループも作ります。健康な人にも研究への協力が必要なのです。この研究には、2009年から2017年までの期間で、合計81人が参加しました。うつ病の人が51人、健康な人が30人という内訳です。
研究に参加した人たちは、うつ病の未治療期間と治療期間、抗うつ薬を使っていた期間など時間に関する内容が確認されました。その上でTSPO-PET検査を受けます。これは、こうした期間がTSPO-PETの結果にどう影響するかを調べるためです。
この結果、うつ病を患っていた期間や抗うつ薬で治療した期間がマイクログリアの活性化に関わっていたことが判明したのですが、最も関わっていたのは、うつ病の未治療期間でした。うつ病の未治療期間が長いほど、脳のマイクログリアが活性化していたのです。脳の場所を細かく言うと、前頭前野、前部帯状回、島などの部分でマイクログリアの活性化が見られました。
この結果から考えるに、うつ病を治療せずに放置しておくと、脳に炎症が出てくる可能性が考えられます。脳の炎症が続くと、脳の細胞が壊れていってしまいます。炎症は慢性化すると問題になるのです。うつ病の早期治療は、脳を守るためにも重要なのかもしれませんね。
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