チック、強迫性障害の遺伝
(こちらは昨年noteで公開した記事を一部修正したものです)
チックという病気を知っていますか?
ビートたけし(北野武)さんの肩を動かす仕草が有名ですが、あの仕草のように、体の一部が突然、勝手に動きだし、それが何度も繰り返され、自分の意思ではコントロールできないというものがチックです。
また、音声チックというものもあって、この場合は、自分の意思に関わらず、急に大声をあげたり、奇声をあげたりといった行為を繰り返してしまいます。
そして、話は変わるようですが、強迫性障害という病気を聞いたことはあるでしょうか?
これは、何度も同じ行為を繰り返してしまうというもので、例えば何度も手を洗ったり、何度も確認したりを繰り返してしまいます。
これも、自分の意思ではコントロールできずに、何度も繰り返すという点でチックに似ています。
実は、一人の患者さんが強迫性障害とチックの両方を持つということは多く、最近ではこの2つはとても近い病気として考えられるようになりました。
そのため、強迫性障害とチックをまとめて、強迫スペクトラムと呼ぶこともあります。
さて、今回はこの強迫スペクトラムである、チックと強迫性障害の遺伝性を調べたデンマークの論文を紹介します。
ある病気が同じ家系、同じ血すじの人々に多い場合、その病気は遺伝性が強いと考えられます。
まあ、正確には、家族内集積性が強いというみたいです。
今回の研究では、チックと強迫性障害のどちらが家族内集積性が高いかを統計的に調べています。
統計的なデータは、人数が大事です。
少人数よりは大人数の方が良いんですが、この研究で扱ったデータは、なんと、174万1271人分です。
これは膨大なデータですね。
この中でチックの方と強迫性障害の方が調べられました。
内訳は、チックの方が5596人、強迫性障害の方が6191人。両方とも持っている方が412人とのことです。
そして、この方々の親、兄弟に同じ病気の方がいないかが調べられました。
すると、兄弟にチックの人がいる場合、そうでない人と比べて、確率的に、18.63倍チックになりやすくなることが分かりました。
一方、兄弟に強迫性障害の人がいると4.89倍、強迫性障害になりやすくなります。
チックの方が高い結果ですね。
そして、親がチックだと、子供は61.02倍チックになりやすくなり、親が強迫性障害だと、6.25倍、子供は強迫性障害になりやすくなることも分かりました。
こちらは、圧倒的にチックの方が高いです。
まあ、細かい数字は国や人種によっても違うと思うので、あまり考えなくても良いと思いますが、とにかくチックの方が強迫性障害よりも家族内集積性は高い、つまり、遺伝性が高いということはできそうです。
ここまでくっきりと差が出ると、チックと強迫性障害を同じカテゴリーにくくってしまうのも、どうなのかなと思いますね。
やはり、生物学的なメカニズムに違いがあるのかもしれません。
今後、遺伝子レベルで解析していくと、より多くのことが分かりそうですね。
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