パニック障害の未来の治療
パニック障害という病気はかなり沢山の人にみられる精神疾患です。精神疾患なんて表現すると、何やら異質なものという印象を与えてしまうかもしれませんが、パニック障害は私たちの正常な心のありようと大きく違うものではありません。
パニック障害の中心を成しているものは、不安や恐怖です。とても強い不安、恐怖によって動悸がしたり、息苦しくなったり、冷や汗が出たり、お腹が痛くなったりします。これがパニック発作という症状で、パニック障害の中核的な症状になります。
パニック発作と言えるほどの強い症状を感じたことが無い人でも、不安や恐怖を感じたことが無いということはないと思います。不安、強い恐怖により、冷や汗が出たり、胸がドキドキしたことくらいなら、誰にでも経験があるのではないでしょうか。つまり、誰もが経験したことのある状態の延長線上に、パニック障害があるのです。
ただ、いくら私たちの通常の精神状態に近いからといって、パニック障害が病気であり、治療が必要なことは言うまでもありません。パニック障害の治療には精神療法、心理療法というものもありますが、薬物療法、すなわち、薬を使って治療する方法もあります。
パニック障害の薬物療法は、脳に物理的に作用して不安になりにくくするというものです。しかし、現在のところ、パニック障害の薬はそんなに沢山の種類がありません。脳のセロトニンという物質を増やす治療ばかりです。しかし、我々の脳はそんなに単純ではありません。セロトニンさえ増やしておけば、何とかなるというものでもないのです。
パニック障害のメカニズムは複雑なものだと考えられます。セロトニンだけが関わるような単純な構造ではないでしょう。それでは、この複雑な構造をもっと解き明かすことができれば、パニック障害のメカニズムをもっともっと知ることができます。パニック障害の人の脳の中では、いったいどんなことが起こっているのか。この謎の解明は、パニック障害の治療の開発に繋がるかもしれません。そんな期待を込めて、世界中で多くの研究者が、パニック障害の人の脳を研究しています。今日は、そんな多くの研究をまとめた論文を紹介します。
パニック障害は「恐怖の神経ネットワーク」が関わる病気と考えられています。これを提唱している研究者の中心人物がGormanという人のようです。この恐怖の神経ネットワークの中核は、扁桃体という脳の場所だと言われてきました。しかし、最近の研究では、さらにパニック障害のメカニズムについて理解が進んでいるようです。今回、紹介する医学論文は、多くの研究結果を包括的に集めて、最新のパニック障害研究の動向を探るものです。
パニック障害に関わる恐怖の神経ネットワークは、MRIなどの画像検査によって調べられてきました。たくさんの研究を見ると、脳の扁桃体という場所がパニック障害に関わるという研究結果はそんなに多くなく、それよりも、むしろ他の領域が関わっているのではないか、というように話が変わってきているとのこと。具体的な脳の場所で言うと、脳幹や、帯状回という部分の前方から真ん中あたり、島、前頭前野などがパニック障害に関わる神経ネットワークではないかという結果が多いようです。
研究の技術が向上するにつれて、今までの定説とは違う、新たな真実が分かることもあります。確証を得るにはもっと研究が必要なのでしょうが、パニック障害の病理おける新真実が出てくるかもしれませんね。このためには、やはり画像研究のテクノロジーの更なる進化が必要でしょう。
最近では、遺伝子研究と画像研究を掛け合わせた手法も開発されたようです。遺伝子は生体内で使われる物質の設計図です。遺伝子と、脳で使われている物質の関係を調べることで、パニック障害の人の脳の中では、どのような物質が関わっているのかを知ることができます。パニック障害に関わっている物質が分かると、それをターゲットにした薬を開発できるかもしれません。
この遺伝子と画像を掛け合わせた最新の研究では、ニューロペプチドS受容体、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体や、TMEM123D、ACCN2といった物質がパニック障害と関わっているかもしれないということが新たに分かったとのこと。。ちょっと専門用語で何いってるか分からないと思いますが、ようは、今後こうした物質を左右させるような薬が開発されるかもしれないという話です。つまり、パニック障害の新しい薬に繋がる話なのです。
このように、最新の科学で病気の解明が進めば、新しい治療法の開発も進みます。病気の解明と、治療法の開発はセットなわけです。今後も、もっと研究が進んで欲しいですね。期待しましょう。
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