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リチウムまとめ



炭酸リチウムのまとめ

リチウムと聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょうか。一般的に聞く名前であれば、リチウム電池ですかね。あれは電池の中にリチウムを使っています。リチウムは金属の一種です。

さて、精神科医の場合、リチウムと聞くと向精神薬を思い浮かべます。リチウムという金属を内服可能にしたものが炭酸リチウムという化合物で、これが精神を安定させる薬として古くから使われています。金属は液体に溶けるとイオン化します。リチウムはリチウムイオンになります。このリチウムイオンが脳に影響を及ぼし、気持ちを落ち着かせるのです。これがどういうメカニズムなのか、まだはっきりしていないようですが、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK-3β)という酵素に作用するなど諸説あります。

リチウムは双極性障害、別名、躁うつ病という精神疾患の治療薬として有効であることは分かっており、現在の双極性障害の治療ガイドラインでも推奨されています。また、研究段階ではありますが、他にもさまざまな効果があると言われ、かなり注目されている成分です。

このブログでも、リチウムについてたびたび取り上げきました。以下にまとめさせていただきます。

まずは、双極性障害の治療ガイドラインを引用した記事です。

躁状態やうつ状態の予防としてリチウムが有効なことは周知の事実です。臨床試験も行われて有効性は確認されており、世界中のガイドラインで双極性障害の治療に推奨されています。

また、うつ病の治療としても有効と言われますが、この場合は抗うつ薬と一緒に使うのが通常です。抗うつ薬の増強療法とよ呼ばれますが、これは抗うつ薬の効果を高めるという意味合いです。ただ、リチウムは単独で使用しても、うつ病の再発予防の効果があるという報告もあります。

下の記事はフィンランドの研究を紹介したものですが、リチウムを飲んでいると、うつ病の入院回数が少なくなるという結果を報告しています。つまり、入院するほどの重度のうつ病は予防できるということです。まだ本当にリチウムを単独で使用してもうつ病の予防ができるのか結論は出ていませんが、可能性のある結果です。

また、水道の中にリチウムイオンが少しだけ含まれている場合があるのですが、リチウムイオンが入った水道水を飲んでいると、精神疾患になりにくいという統計結果も多数発表されています。

リチウムは精神疾患だけでなく脳の疾患を予防する効果もあるのではないかと報告する人たちもいます。ここのブログでは、リチウムには認知症を防ぐ効果があるかもしれないと報告した研究論文を紹介しました。

このように、さまざまな可能性を持つリチウムイオンですが、手放しですごいとほめることもできません。リチウムは取りすぎると副作用が出ます。リチウム中毒とも呼ばれますが、ひどいと命にも関わるような中毒症状が出るので注意が必要です。これは依存症という意味の中毒ではなくて、過剰摂取という意味の中毒です。つまり、リチウムを体内に取り込み過ぎた状態をリチウム中毒と呼ぶわけです。

リチウム中毒はちゃんと防ぐ方法があります。いっきに増やさず少しずつ増やしていけばリスクは減りますし、採血してリチウムの血中濃度を測定すれば、リチウムが中毒域に達しているかいないかが分かります。また、腎臓や甲状腺に副作用が出ていないかどうかも血液検査で分かります。このように血液検査でこまめにモニタリングすることが大事です。しっかりと使えば、副作用の出やすい高齢者でも安全に使えるという研究結果もあり、前回のブログ記事で書きました。

リチウムは副作用や中毒に気をつければ、効果はしっかりしていてメリットの大きな薬です。ただ、安全のために、用量が増えた後には採血で血中濃度の確認が必要ですし、一定の用量で処方されていたとしても徐々に血中濃度が上がることもあるので、少なくとも数ヶ月ごとには採血をすることが大事ですね。

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