HIVと脳の炎症
- Tomoyuki Saito
- 2017年3月22日
- 読了時間: 3分
(こちらは昨年にnoteで公開した記事です)
エイズの原因ウィルスである HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はだれでも聞いたことがあると思います。
かなり治療法が確立されてきましたが、まだまだ怖い感染症です。
なんと、世界で約3500万人も感染者がいます。
さて、このHIVですが、免疫不全を引き起こすだけではありません。
実は、脳に障害をもたらすのはご存知でしょうか?
これはHIV脳症と言われています。脳症とは脳の病気という意味で、広く使われる用語です。
このHIV脳症は様々な精神症状(うつ症状、幻覚など)や認知症の症状(記憶障害など)を引き起こします。
HIV脳症の原因は諸説は色々とあるでしょうが、脳の炎症が有力な説です。
たとえば骨折すると腫れると思いますが、それは炎症が起こっているからです。風邪で熱が出るのも、炎症の影響です。
感染症はなんでも炎症を起こすものですが、脳に炎症を起こすのはまれなんです。でも、HIVは脳に炎症を起こすウィルスなんですね。
治療法が良くなってきたため、ひどいHIV脳症は減ってきたそうですが、それでも無くなったわけではありません。
さて、これはHIV脳症に限らず脳の病気全般に言えることですが、症状が出る前から脳に変化が出ていることが多いです。
認知症などのHIV脳症の症状が出ていなくても、HIVに感染している人の脳には、すでに炎症が起こっているのでしょうか?
今回ご紹介する研究は、この疑問に答えています。
HIV脳症の症状が出る前のHIV感染者の脳の炎症が調べられました。
これは、使った医療機器が画期的です。
実は、脳の炎症を調べるのは難しいものです。脳の検査で一般的なものは CTやMRIですが、これらの検査では炎症がかなりひどくならないと分かりません。
この研究では、TSPO-PETという最新の機械を使って脳の炎症が調べられています。
では、このTSPO-PETの説明をします。
脳に炎症が起きるとマクロファージやミクログリアといった炎症に関わる細胞が活発に動き出し、TSPOというタンパク質の濃度が上がります。TSPO-PETでは、このTSPOを検出するのです。
そして、MRIなんかと同じように画像として見せてくれます。TSPOの濃度が濃いところが、強めに光ったり、色をつけて表示してくれます。
だから、脳の炎症が「見て」分かるんですね。
まだ、TSPO-PETという検査ができる医療施設は日本にほとんど無いと思います。
それくらい最新の機械です。
さて、このTSPO-PETで調べた結果ですが、HIVに感染はしたけど、認知症などのHIV脳症の症状が出ていない方、つまり、一見して何の問題もない方の脳でも、普通の人の脳と比べるとTSPOがたくさん検出されました。
もっと細かく見ると、頭頂葉(脳のてっぺんのあたり)、後頭葉(脳の後ろの方)や淡蒼球(脳の奥の方)でTSPOが顕著に増えていたとか。
つまり、やはり、症状が出る前からHIV感染者の脳には炎症が起こっているということです。
この結果から考えると、このTSPO-PETがHIV感染者の脳の炎症を早期から発見できるという風にもとらえることができます。
癌なんかでも同じですが、早期発見は大事です。早めに治療を始める方が、遅くに治療を始めるよりも効果がありますし、予後も良くなるものです。
今後は、HIVの脳症をいかに早く発見し、どう治療するかということが研究されていくと思います。
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