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GnRHアナログによる性的倒錯の治療


アナログは類似物とか類似体という意味です。

私たちの体の中には、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモン、略してGnRHというホルモンがあり、人間の生殖機能に対して重要な役割を担っています。

そのGnRHと似た働きを持つ薬物なので、GnRHアナログと言うわけです。

このGnRHアナログは、日本でも、子宮内膜症や子宮筋腫,前立腺癌、乳癌などの治療に用いられます。

そして、性欲を抑える効果も強いことから、海外では性的倒錯の治療にも用いられています。

性欲を抑えるメカニズムも簡単に説明します。

抗男性ホルモン薬による治療の説明でも書きましたが、男性ホルモンを抑えることで、性欲を抑えるという方法が、性的倒錯の主流な治療法です。

このGnRHアナログは、黄体形成ホルモン(LHと略します)という別のホルモンを分泌させ、その影響で一時的に男性ホルモンが増えます。

「男性ホルモンが増えると性欲が増えるので良くないのでは?」と疑問に思う人もいると思いますが、これはあくまで一時的な反応なんです。

継続的にGnRHアナログを使うことによって、逆の反応が起こってきます。

2-4週間で、LHが減っていき、男性ホルモンも減ります。

不思議かもしれませんが、私たちの体の中では、過剰にホルモンが分泌されると、それを調整するために、逆の反応が起こることがあります。

これを、ネガティブフィードバックと言います。

このように、GnRHアナログは、男性ホルモンの効果を直接弱めたりブロックしたりするわけではなく、ネガティブフィードバックという間接的な方法で男性ホルモンを減らす形になります。

男性ホルモンを直接抑える、抗男性ホルモン薬の方が効きそうな感じがしますが、様々な研究データからは、GnRHアナログの方が抗男性ホルモン薬よりも治療効果が高いという結果が得られているようです。

性欲を抑え、逸脱した性的な行為や性的暴行を減らすという結果が認められています。

ただ、最初のうちは男性ホルモンを増やして性欲を増してしまうことがあるので、抗男性ホルモン薬を一緒に使うこともあるようです。

このように、GnRHアナログの効果は強いのですが、治療をやめると数ヶ月で効果は切れてしまいます。

このため、何年も継続的に投薬されるケースが多いようです。

性的倒錯の治療に使われる、主なGnRHアナログは三つで、トリプトレリン、リュープロレリン、ゴセレリンなどがあります。

このうち、リュープロレリン、ゴセレリンは日本でも使われていますが、その用途は上にも書いたように、子宮内膜症や前立腺癌の治療です。

日本では、性的倒錯の治療として使うことは正式に認められていません。

これらのGnRHアナログは、基本的には、4週間に1度の間隔で注射するというタイプになります。

飲み薬だと、飲み忘れたり、飲んだふりしたりできてしまうので、確実に薬が体の中に入っているか分からないことが多いです。

しかし、注射薬の場合、医療者が直接注射するので、確実に薬が体の中に入っているのが分かります。

このように、確実に体の中に入るため、効果がしっかりしているということもあると思います。

GnRHアナログの副作用で一番問題になるのは、骨が弱くなるというもの。

高齢の方だと、骨が弱まると骨折の危険性が高まるので注意が必要です。

他の副作用は、ホットフラッシュという更年期障害でも見られるほてりや発汗、吐き気、体重増加、脱毛、血圧の変動、うつ症状などです。

このため、治療前と後に骨の状態を検査したり、定期的に血液検査や体重測定などが必要になる薬です。


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