自律神経失調症とパニック
パニック発作という言葉をご存知でしょうか。パニックという言葉は、例えば「パニック」映画など結構、日常的に使われます。慌てふためくという意味でもパニクるなどと表現したりもしますし、結構軽い意味合いですよね。ただ、精神科でいうパニックは意味がだいぶ違います。
パニック発作は、急に動悸や息苦しさを感じ、強い不安感や恐怖感に襲われるという症状です。ちょっと慌ててしまったなどというパニックとは全く異なります。他にも、めまいがしたり、吐き気や下痢などの胃腸の症状が出たり、冷や汗が出たり、手足が痺れたりと様々な症状が出ることがあります。どの症状が出るかは人によって違います。こうした症状をまとめて自律神経症状と呼びます。このためか、パニック発作も自律神経失調症の仲間にしてしまう考え方もありますが、そもそも自律神経失調症が正式な病名ではないので微妙な分類でしょう。日頃から自律神経のバランスが崩れているわけではなくて、発作的に、急激に自律神経症状が出ます。普段はなんでもないのに、発作が出たときだけ精神的に不安定になるので、周りからは理解されにくいこともあります。パニック発作の最中を見たことがないと、普段は元気なのでおかしいと思うのかもしれません。たまに仮病だと疑う人もいるようですが、当然、仮病ではありません。パニック発作は非常に多い精神症状であり、国際的にも認められた名称になってます。このパニック発作が続く場合をパニック障害というので、この二つはかなり近いものと考えて結構です。
パニック発作、パニック障害の原因は自律神経の問題ではなくて、強い不安感、恐怖感です。その感情をたどると、過去の辛い記憶などが原因になっていることも多いです。また、うつ病やPTSDなど他の精神疾患になっても、パニック発作が一緒に出ることもあります。つまり、あくまで原因は精神にあり、自律神経の症状はその結果として起こるものだということです。
電車やバスが怖くて乗れなくなる広場恐怖がパニック発作と関わる場合も多いのですが、この場合は広場恐怖を伴うパニック障害というように、くっつけて呼んだりします。広場恐怖とは名前からは想像がつきにくいのですが、特定の場所が怖くなる症状で、閉塞感のある場所や閉ざされた場所が怖くなる人が多いです。
このようにパニック発作が続く場合は、主に抗うつ薬、つまり、うつ病の薬で治療します。また、認知行動療法や暴露療法といった精神療法で治療することもできます。認知行動療法とは、物事の捉え方や考え方を自分なりに変えていくことで気持ちを安定させる方法です。暴露療法は、不安や恐怖の対象に少しずつ慣れていくような方法で、例えば、電車が怖い場合は、まずは電車の写真を見るだけ、それが平気になれば、駅に行ってみる。そして、一駅だけ電車に乗ってみるというように、少しずつハードルを上げながら不安や恐怖を克服していく治療です。このように、精神科的な治療によりパニック発作は治っていきます。もちろん慢性化する人もいますが、アプローチの対象は精神であり、自律神経そのものではないということを知っておきましょう。
自律神経失調症の原因は色々とあることは過去の記事の通りです。
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