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自閉症スペクトラムとADHDの境界線



自閉症とADHD

今回は自閉症スペクトラムとADHDという発達障害の診断について話します。

精神科の診療をしていると、患者さんが「A病院とB病院に行ったけど、言われた病名が違う」などと言って不満そうにしているケースを時々見かけます。たしかに、病院によって診断がころころと変わるというのはなんだか分かりにくいですし、良い加減なことを言ってんじゃないのと不審に思うこともあるかもしれません。例えば、内科の病院で診断が病院によってころころと変わるなんてそんなに無いですしね(まあ、それでも時々あることだとは思いますが)。ただ、精神疾患の診断は、実際のところ重なり合いが強くて、境界が不明瞭なことが多いのです。つまり、「あなたはこの病気です!」とクリアカットに分けられないんですよね。その一例として、今回は自閉症スペクトラムとADHDの重なり合いについての研究を紹介したいと思います。

現代の精神科では、基本的に症状の経過から診断を下します。ただ、患者さんから症状を聞いていると自閉症スペクトラムに特有の症状である人付き合いの苦手さ、コミュニケーションの不得意さなどと、ADHDの注意力がなく落ち着きがないという症状の両方を併せ持つ人は珍しくありません。実は、この2つの診断も境界が曖昧なものなんです。これを最新の脳科学的なアプローチで解明しようとするアメリカの研究がありました。

この研究では、MRIの拡散テンソルという技術を使っています。MRIはよく大きな病院にある装置で、体の中をスキャンするものです。この手法はいくつかの種類があって、拡散テンソルは脳の神経の回路、神経同士のネットワークを可視化する技術です。この拡散テンソルを使って、自閉症スペクトラムとADHDが脳科学的にも重なり合っているのかが調べられました。

この研究には子供たちが参加しています。自閉症スペクトラムと診断された69人の子と、ADHDと診断された55人の子たちが参加し、また特に発達障害など無い子供が50人参加しています。彼らの脳の神経ネットワークを解析したところ、自閉症スペクトラムの子供では脳梁という部分が強く関係していることが分かりました。ただ、ADHDの子にも、発達障害と診断されていない子供にだって自閉症スペクトラム的な傾向がある子はいます。診断に関係なく、人付き合いやコミュニケーションが苦手な子はいるのです。この研究では、それを裏付ける結果が出ました。実は、発達障害などの診断に関係なく、脳梁は社会性やコミュニケーション能力に関わっていたとのことです。つまり、脳梁の神経ネットワークが弱いと人付き合いやコミュニケーションは苦手になるものの、ADHDの子も同じですし、診断には関係しないとのことです。

こうした結果を見ると、表面的な診断にどれだけの意味があるのか疑問です。生まれながらに脳の形状は違います。そのため、生まれながらに人付き合いが苦手な人もいるでしょう。ただ、それは診断に関わらず誰にでもあることです。生来の脳の特徴、性質や能力を、わざわざ発達障害と診断する意味は少ないのかもしれません。精神科の診断なんて曖昧なものですが、こうした脳科学的なアプローチがそれを証明してくれますね。

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