男性ホルモンを抑える性的倒錯の治療
性欲と男性ホルモン(アンドロゲンとも言います。色々ありますが、主な男性ホルモンはテストステロンです)は関係していると考えられています。
男性ホルモンの働きを抑えることで、性欲を抑えるという治療があり、これが性的倒錯の治療に用いられることがあります。
プロゲステロンという、女性の妊娠などに関わるホルモンには、男性ホルモンを抑える効果がありますが、このプロゲステロンと似たような働きをする薬物が、男性ホルモンを抑える治療に使われます。
こうした薬を、そのまんま、抗男性ホルモン薬、抗アンドロゲン薬などと言います。
さて、ここで、ざっくりとホルモンの説明をします。
ホルモンは様々な内臓、器官から分泌されて血液中を流れていますが、最終的には受容体というものに受け取られて効果を発揮します。
男性ホルモンについても同じで、男性ホルモンの受容体があるわけですが、抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンが受容体に受け取られるのを阻止します。
このため、男性ホルモンは効果を発揮できなくなるわけです。
また、これとは別の方法で男性ホルモンを抑える働きもあります。
抗男性ホルモン剤は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRHと略します)や黄体形成ホルモン(LHと略します)などのホルモンの分泌を抑えます。
このGnRHはLHを分泌させる働きがあり、LHは男性ホルモンを分泌させます。
まとめると、GnRH - LH - 男性ホルモン、の順番です。
つまり、GnRHやLHは、リレーみたいな形でつながりながら、男性ホルモンを分泌させるホルモンなんですね。
抗男性ホルモン薬は、こうした役割を持つGnRHやLHを抑えることで、間接的に男性ホルモンの分泌を抑える働きもあるのです。
代表的な抗男性ホルモン剤は、メドロキシプロゲステロンです。
メドロキシプロゲステロンは日本でも月経の異常や子宮癌の治療などに使われている薬です。
この薬を性的倒錯の患者さんに投与すると、異常な性的行動や性的な想像が減るという研究結果が得られており、海外では性的倒錯の薬としても使われます。
よくある副作用は体重増加や頭痛のようですが、うつ状態になったり、高血圧や糖尿病、血が血管の中で固まる血栓症という病気が起きやすくなったりという副作用が出ることもあります。
また、まれに肺塞栓といって、肺の血管がつまって呼吸不全になるという副作用が出ることもあります。
この肺塞栓は、死亡する可能性もある怖い副作用です。
こうした副作用のリスクから、使用する時は慎重になるべきで、定期的に精神状態をチェックし、半年ごとに血液検査、血圧、体重の測定などを行うようにとガイドラインに書かれています。
他には、シプロテロンという抗男性ホルモン薬もあります。
シプロテロンは現時点で、日本では使われていないようですね。
アメリカではメドロキシプロゲステロン、ヨーロッパの一部ではシプロテロンというふうに、国によって使われている薬に違いがあるようです。
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