アルコール精神病
アルコール依存症の治療ガイドラインシリーズ。世界生物学的精神医学会のガイドラインに沿って解説を続けています。
今回はアルコール精神病について解説します。
アルコールの脳に対する影響はたくさんあることはすでにお伝えした通りですが、長い期間、大量のお酒を飲み続けると、稀にですが、
幻聴(ありもしない声や音が聞こえる)や、幻視(実際に存在しないものが見える)、被害妄想(根拠もなく自分は誰かに狙われているなどと思い込むもの)などの症状も出てくることがあります。
このような症状を精神病症状と言います。
ようは、非現実的というか、実際に無いものをあると誤解する症状ですね。
泥酔した状態でなくても、シラフの時でもこのような症状が出てしまうのです。
アルコールの離脱症状や泥酔状態で錯乱したりする、せん妄という病気とは違い、意識がはっきりした状態で起こります。
このような幻聴や被害妄想といった症状は、統合失調症という精神疾患の症状にとてもよく似ています。
アルコール精神病と統合失調症を、症状だけで見分けるのは難しいです。
お薬は統合失調症の治療法に近いです。
抗精神病薬という脳のドーパミン神経系を抑える薬を使います。
これにより、幻覚や妄想といった精神病症状が抑えられます。
また、ベンゾジアゼピン系の薬(不安を抑えたり、睡眠を促す薬)も抗精神病薬と一緒に使うことが多いです。
すでに書きましたが、アルコールの離脱症状の治療や、離脱症状の予防などにも、このベンゾジアゼピン系の薬を使います。
先ほど、統合失調症の治療に近いと言いましたが、アルコール精神病と統合失調症では、薬を続ける期間が違います。
統合失調症は基本的に一生続く病気のため、お薬をずっと飲み続ける必要があるのですが、アルコール精神病に関してはお酒をやめてしまうと8割から9割の人は完治してしまいます。
ですから、お酒さえやめたら薬の治療を続ける必要はありません。
幻覚や妄想の原因はあくまでアルコールなので、大元のアルコールが絶たれれば大丈夫ということです。
症状は統合失調症に似ていても、やはりアルコール精神病と統合失調症は違う病気なんですね。
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