急性アルコール中毒の治療
さて、今回も世界生物学的精神医学会のガイドラインに沿って、アルコール依存症の治療について解説していきたいと思います。
今回は、急性アルコール中毒についてです。
アルコール中毒の略語である「アル中」というと、一般的にはアルコール依存症のことを指していると思います。
ただ、本来、「中毒」というと大量の物質を体内に取り込み害が出ている状態を言います。
したがって、急性アルコール中毒とは、大量のアルコールを体内に取り込み、体に害が出ている状況のことを言います。
アルコールの力は怖いもので、ひどいと昏睡状態になることもありますし、さらに重症になると脳の呼吸中枢に作用して呼吸を止めてしまうこともあります。
当然、呼吸が止まれば死んでしまうわけですから、非常に危険な状態です。
このようにアルコール中毒状態におちいった場合は、とにかく心臓や呼吸を止めないように、全身管理が必要になります。
急性アルコール中毒の時は、大体が脱水状態ですから、点滴をして水分を補います。
また、アルコールを摂取するとビタミンB1(チアミン)が消費されるので、点滴にビタミンB1を入れます。
また、心臓や呼吸の状態をしっかりと把握するために、心電図モニターや、呼吸状態をチェックするモニター(指につけて酸素飽和度を見るやつです)をつけます。
こうした全身管理は当然ですが、大きな病院じゃないとできません。
たいていは、救急車で大きな病院に搬送して治療することになると思います。
ちょっと話は変わりますが、アルコールはベンゾジアゼピン系の薬(睡眠薬や抗不安薬などの種類です)と似ている作用があるのですが、そこから考えて、ベンゾジアゼピン系の薬の中毒状態を治すフルマゼニルという薬が、アルコール中毒にも有効なのではないかという仮説があります。
一応、小規模な研究でフルマゼニルがアルコール中毒の治療に有効という結果が出た事実もあるようです。
ただし、やはり大規模な研究データで確認しないことには、はっきりとしたことは言えません。
ガイドラインでは、本当にフルマゼニルがアルコール中毒に有効なのかどうかは、もっと大きな研究で確認する必要があると書いています。
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