アルコールの神経伝達物質への影響
お酒はさまざまな害をもたらすことは誰でも知っていると思います。
肝臓を痛めたり、心臓病や癌になりやすくなったりと、健康を害する原因になります。
しかし、脳への影響も強いことは知っているでしょうか?
世界生物学的精神医学会のガイドラインを参考に、アルコールの脳への影響について解説したいと思います。
参考文献:Guidelines for biological treatment of substance use and related disorders, part 1: Alcoholism, first revision. THE WORLD JOURNAL OF BIOLOGICAL PSYCHIATRY. 2017
脳の中にはたくさんの神経細胞があり、お互いに連絡しています。
その連絡を取り合うのに大事なのが、神経伝達物質です。
ある神経細胞から神経伝達物質が出て、別の神経細胞にある受容体というところで受け取ります。
神経伝達物質と受容体はセットみたいなもので、まとめて考えることが多いです。
例えば、うつ病に関わる神経伝達物質の一つに、セロトニンというものがあります。
このセロトニンや、それを受け取る受容体、受容体がある神経細胞などを含め「セロトニン系」とか、「セロトニン・システム」とか言います。
アルコールはこの神経伝達物質を中心とした神経系、神経のシステムに影響を与えますが、本当にたくさんの神経系統に影響が出ます。
GABA(ギャバと読みます。ガンマアミノ酪酸の略語です)、内因性オピオイド(モルヒネやヘロインに似た物質が脳の中にもあります。脳内麻薬とも言われます)、内因性カンナビノイド(これも脳内麻薬の一種で、大麻に近い成分です)、グルタミン酸、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンなどの神経伝達物質をとりまく神経システムが、アルコールの影響を受けるといわれています。
お酒を飲むと、気分が良くなったり、眠くなったりしますが、それは、アルコールが、こうした様々な神経に影響を与えるからなんです。
こうしたメカニズムが分かってくると、薬によってアルコールの被害を食い止めようという考え方も出てきます。
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