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非定型抗精神病薬による双極性障害の治療



非定型抗精神病薬

今回は、双極性障害の主な治療薬である非定型抗精神病薬について解説します。双極性障害の治療において、薬を飲むことはとても大事です。もちろん、ストレスのコントロールや、心理療法なども効果はありますし、そういったことをしなくて良いということではないですが、それだけでは改善は難しいです。それは、やはり原因が生物学的なものだからでしょう。例えば、適応障害という病気は心理的なストレスが主な原因です。しかし、双極性障害はストレスや心理的な要素よりも生物学的な要素が強いのです。もっと言えば、脳に物理的な異常が出ます。このため、直接的に脳の異常を治療しないとどうにもなりません。その方法が薬になるのです。精神科の薬は胃から吸収されて血液をめぐり、脳に到達します。原因である脳にダイレクトに効くから、薬の有効性は高いわけです。

さて、そんな薬ですが、双極性障害の治療に使うものは、大きく分けて抗精神病薬と気分安定薬という種類になります。それぞれ得意不得意があり、副作用も違ってきます。まずは抗精神病薬から説明します。これには第1世代と呼ばれる定型抗精神病薬と第2世代の非定型抗精神病薬があります。定型抗精神病薬の方が昔からあるので第1世代、非定型抗精神病薬はその後に出てきたので第2世代ということです。どちらも脳のドパミンの作用を抑える作用があります。さらに、第2世代の非定型抗精神病薬の方は、ドパミンだけでなくセロトニンの作用の一部をブロックします。これにより、ドパミン神経系でも大事な部分の活動はブロックを弱めることができます。ドパミン神経系は、筋肉の動きの調整をしたり、やる気を出す役割を持っていたりします。これを過剰にブロックすると体が動きにくくなったり、やる気が出なくなったりするのですが、非定型抗精神病薬はセロトニン神経系も調整することで、こうした副作用を出にくくするのです。現在は、第1世代よりも、副作用が出にくい第2世代の方が一般的に使われています。

さて、この第2世代の非定型抗精神病薬ですが、双極性障害に効果があります。双極性障害には、うつ病と躁病の両方があり、さらにうつ病と躁病が混じる混合状態もあるのですが、非定型抗精神病薬はどの症状にも効果があります。そして、精神科の薬はしばらく使わないと効いてこないものもあるのですが、非定型抗精神病薬はわりと早く効果が出てきます。飲んで1時間以内に落ち着くものもあります。そして、さらに飲み続けると、より効果が確実に出てくるのです。このように非定型抗精神病薬には色々な効果があり、即効性もある便利な薬なので、最近はよく双極性障害の治療に使われるようになってきています。主な非定型抗精神病薬には、クエチアピン、アリピプラゾール、オランザピン、アセナピン、リスペリドンなどがあります。

最近は、うつ病のなかに情緒不安定さ、双極性障害っぽさが混ざるような混合うつ病(混合状態の特徴を伴ううつ病)にも、非定型抗精神病薬が有効と言われてきています。混合うつ病の治療については、こちらの記事(下にリンクを貼ります)で詳しく紹介しましたので、ご覧ください。(少しだけ双極性障害っぽいうつ病の治療法(混合うつ病))

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