うつ病ガイドライン徹底解説7 自殺、自傷
今回は、うつ病の話をする上で欠かすことのできない、自殺、自傷について解説します。
うつ病になると、死にたいという気持ちが強くなり、自殺してしまったり、自分を傷つけてしまったりする場合があります。
ただ、もちろん全員というわけではありません。本当に一部の方です。
ただ、少数派だからといって軽視する問題ではなく、これを防ぐのは精神科医の使命です。
では、どうしたら良いかというと、まずはリスクを認識するところから始まります。
つまり、自殺する可能性が高いケースに気づくことです。
そのためには、いろいろな点に注目しないといけません。
最も注意しないといけない点は、「死にたい」という気持ちがどのくらい強いかです。
自殺する気持ちが非常に強い場合は、誰かに見守ってもらう必要がありますし、必要に応じて入院を考えなければなりません。
命を守る、保護するということです。
また、こういう人は自殺するリスクが高いので注意が必要ということも、統計的に分かっているものがあります。
ガイドラインでは、「自殺危険率の高いうつ病患者の特徴」というタイトルの表が載っています。
それを見ると、「男性」「65歳以上」と書かれています。性別や年齢にも注意が必要ということです。
また、「単身(特に子供がいない)」「失業中」といった生活面の要素も書かれています。やはり、孤独で寂しいと気持ちも辛くなりますし、誰も見守ってくれる人がいないのもマイナス要素です。
あとは、「近い過去に強度のストレスフルな出来事あり」という点は、誰でも理解できると思います。
うつ病ガイドライン徹底解説3でも書いた通り、ストレスとうつ病は密接に関係しているのです。
他には、「自殺に向けた特定の計画」「致死的な方法にアクセスできること」と書かれています。
つまり、具体的にどういった方法で自殺するか計画を練っている人や、準備をしている人は自殺の危険性が高いということです。
また、過去にさかのぼって考える部分もあります。
「自殺企図の既往あり」
つまり、過去に自殺を試みたことがある人や、
「精神科入院歴あり」
つまり、ある程度、重症の精神疾患になったことがある人なども自殺のリスクが高いのです。
ちょっと意外と思う人もいるかなと思うのは、「自殺の家族歴あり」という点です。
家族が自殺するなんてショッキングなことだから、多少なりとも心理的に影響を受けるということもあるでしょうし、遺伝的な要素もあると思います。
また、精神症状から自殺のリスクを考えることもできます。
「アルコール・薬物依存」「パニック発作」「重度の不安」「重度の絶望感や快楽欠如(なにも楽しいと思えない症状)」といった精神症状があると、自殺のリスクが高まることが分かっています。
また、「重症身体疾患」という健康の側面も見逃せません。
癌などの重い病気になって、それを苦にして自殺してしまう方も多いのです。
また、直接的に死んでしまうようなものでなくても、自分を傷つける行為(自傷行為)には注意が必要です。
例えばリストカットなど自分に浅い傷をつける方がいます。
浅い傷で死ぬことはまず無いですが、こうした方は、長い目で見ると自殺の可能性が高いのです。
あとは、過量服薬、オーバードーズ(Over Dose)などと呼ばれる、薬をたくさん飲んでしまうというものも、亡くなってしまう可能性がある危険な行動です。
特に、心臓に影響する三環系抗うつ薬といううつ病の薬や、腎臓や脳に影響する炭酸リチウムという薬などをたくさん飲んでしまうと危険です。
こうした事態を防ぐためにも、時には、信頼できる方に協力を求めて薬の管理をお願いしたり、なるべく多くの薬を処方しないようにしたり、通院する間隔を短くするなどの工夫が精神科医に求められます。
さて、次は、うつ病と関係が深い精神疾患について解説します。
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