うつ病ガイドライン徹底解説12 治療が失敗したら、、
今回は残念ながら治療がうまくいかなかった場合、失敗した場合について説明します。
一生懸命治療しても、なかなかうまくいかない場合はあります。
その場合は、謙虚に反省し、今までのプロセスについて考え直さないといけません。
うつ病学会のガイドラインでは、治療がうまくいかなかった場合に考える点を箇条書きでまとめています。そちらに沿って説明していきます。
まずは診断が適切か否かを判断します。何度も書きましたが、うつ病と双極性障害を見分けるのは難しいです。診断が間違っていると、治療法も間違ってしまうので、なかなか治療しても治らない場合は、診断ミスがないか考え直す必要があります。
うつ病と一緒に起きている精神疾患はないかどうかを考えます。不安障害や依存症などがあるとうつ病が重症化することは、うつ病ガイドライン徹底解説8でも記載した通りです。他にも、発達障害やパーソナリティ障害などについても検討が必要です。
体の異常、病気についても考えないといけません。これは、うつ病ガイドライン徹底解説1、6でも説明しましたが、脳梗塞やホルモンの異常など、様々な体の病気によって、うつ病と同じ症状が出ます。こうした体の病気があれば、そちらの治療を行わないとうつ病も良くなりません。
薬を使っている場合は、その使い方が間違っていないかを確認します。また、抗うつ薬は効果が出てくるのが遅いので、8週間くらい効果を判定する期間が必要になります。うつ病の治療に限らず、精神科の治療は時間がかかるものが多いです。すぐに効果が無いと決めつけず、しばらく待つのも大事です。
患者さんが、しっかり薬を飲めているかを確認します。飲み忘れていたり、実は飲んだと言っていても飲んでいなかったりすることも多いものです。その場合は、薬の飲み方をまた説明しないといけません。
精神療法(心理療法、心理カウンセリングなど)を行うべきかどうかを検討します。もし、すでに行なっている場合は、方法を変える必要が無いか検討します。精神療法には多くの種類があります。選択肢はたくさんあるのです。
心理社会的な問題について確認します。これは、患者さんを取り巻く環境のことです。例えば、家族や職場の環境が悪くないか、経済的な問題がないかなどを確認し、解決できそうなものは対応します。
このように、治療がうまくいかない場合は、色々と考え直さないといけません。
そして、よく問題を検討した上で、新たな治療法について考えます。
さらに効果を上げるために、薬を変えたり、薬を加えたり(増強療法というやり方があります)、精神療法や社会的サポートを行ったりすることを考えます。
また、少し大がかりにはなりますが、電気による治療(修正型電気けいれん療法)は有効性が高いので、これについても検討します。
さて、次は、うつ病が良くなった後の治療について説明します。
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